自画像構成油彩『風景と私』(F15号)
この作品の課題は「風景と自画像」です。 手前に設定した自画像を画面中央ではなく、少し左に寄せる事で後ろの風景をぐっと遠くし、顔の描写を強調する為に風景はシルエットで扱い、奥行感を感じさせています。 顔の柔らかい表情、洋服や髪留めにチラリと赤を持ってきたりなど、細かな所まで丁寧に魅せる力強い作品になりました。 洋服と背景の色味が近い事で自画像の肌の部分が強調され、観る人は自然と自画像へ目がいきます。 表情もいいですね。髪の毛の動きを利用する事で、今まさに風がふっと通り抜けた瞬間を私達も一緒に体験した様な、そんな臨場感があります。 鑑賞者をちゃんと惹き寄せるだけの描写力も大事ですが、鑑賞者の目をどこに誘導させるのか、その為の画面操作がポイントです。 全体的にとても良いバランスの作品だと思いますが、描写力があるだけに、背景ももっとシャープな観察力のもとで捉えられたら...と期待してしまいます。 つまり、少し、簡単に見えてしまいます。 制作時間も限られているので難しい所ですが、全体の雰囲気はこのままに、だけど最後まで風景のリアル感を緊張感を持って表現した場合はどうなるか、探ってみましょう。 ある程度の描写力がついてくれば、そこそこいい感じの作品が描けるかもしれません。 「上手な絵」の出来上がりです。「上手な絵」は一瞬、目が留まるでしょう。 しかし観る人の五感を揺さぶる様な、気にかかる何かが残る様な作品としてパワー不足です。 でも描写力と同時に観察力をしっかり反映させる事が出来れば、そこにはっとするような臨場感、例えば描きたい場を纏っている空気や温度、匂い、時間など実際は見る事が出来ずともその場にいなければ感じ得る事が出来ない事柄...を含めて表現できる様になります。 観た人をドキリとさせる、そんな緊張感のある作品を目指して下さい! 想定問題をふまえて、常日頃から日常風景を鋭く観察する事が、とても大事になりますね。(阿部 未奈子)
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